漁村の女(清水勲篇/岩波文庫ビゴー日本素描集より)
こちらは、ビゴーお得意の漫画。ビゴー研究の第一人者である清水勲氏、著書の中でこう記述しています。
この絵は、ビゴーがアトリエをかまえていた千葉の稲毛海岸のスケッチであろう。漁村の女たちが冬の日だまりで井戸端会議をしているところである。中央の女性は海産物の行商をやっているようだ。娘や姑に赤ん坊のお守りをさせ、漁村の女たちは生活のために猛烈に働いた。手ぬぐいをかぶり野良着に腰布をつけ前掛けをしている。脚には脚絆をつけ地下足袋をはいている。左端の少女も地下足袋をはいている。少女の髪の毛が風で乱れて赤ん坊の顔にかからないよう、しっかりと手ぬぐいで押さえている。赤ん坊のお守りは自分の役割と自覚した少女の姿がいじらしい。
豊かではないが貧しくもない、海の幸に恵まれた明治漁村の女性風俗を描いた貴重な一枚である。
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