第6回「G.ビゴーが描いた明治の稲毛海岸」

海の記憶写真館6回目は、写真館ならぬ美術館。皆さんは、明治時代に来日したジョルジュ・フェルナン・ビゴー(1860〜1927)というフランス人画家をご存知でしょうか。きっと、当時の世相をユーモアとともに活写した諷刺画を目にしたことがあると思います。今回紹介するのは、ビゴーには珍しい油彩。しかも稲毛海岸の漁村風景を描いています。千葉県立美術館のご厚意により、この写真館で公開させていただきます。

 

ジョルジュ・フェルナン・ビゴー(1860―1927)肖像 

(ザ・グラフィック紙掲載)
18年の滞日期間のうち、日本人佐野マスと結婚し(1894明治27年・34歳)、稲毛にアトリエを設け住んでいた時期があります。当時の稲毛は保養地として、政治家、著名人が別荘を建てたり、海気館(保養旅館)がにぎわっていました。下の作品は、稲毛にアトリエを構えていた時期に描かれたと思われます。

 

明治の稲毛の夕焼け(千葉県立美術館所蔵)
海と空を染める夕焼け、浜辺にはくつろぐ漁村の人々がいます。背後には、現在も14号線際に残る鳥居が見え、どこか印象派を感じさせる画風です。

 

漁村の女(清水勲篇/岩波文庫ビゴー日本素描集より)
こちらは、ビゴーお得意の漫画。ビゴー研究の第一人者である清水勲氏、著書の中でこう記述しています。

この絵は、ビゴーがアトリエをかまえていた千葉の稲毛海岸のスケッチであろう。漁村の女たちが冬の日だまりで井戸端会議をしているところである。中央の女性は海産物の行商をやっているようだ。娘や姑に赤ん坊のお守りをさせ、漁村の女たちは生活のために猛烈に働いた。手ぬぐいをかぶり野良着に腰布をつけ前掛けをしている。脚には脚絆をつけ地下足袋をはいている。左端の少女も地下足袋をはいている。少女の髪の毛が風で乱れて赤ん坊の顔にかからないよう、しっかりと手ぬぐいで押さえている。赤ん坊のお守りは自分の役割と自覚した少女の姿がいじらしい。
豊かではないが貧しくもない、海の幸に恵まれた明治漁村の女性風俗を描いた貴重な一枚である。

 

ビゴーについてもっと知りたい方に
清水勲編 ビゴー日本素描集 続ビゴー日本素描集(2冊とも岩波文庫660円+税)
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